「キャンベル生物学」を読んで
こんにちは。shundroid です。
新年度・新時代が始まりましたね。
さて、昨日「キャンベル生物学」という太い本を読み終わったので
その感想をまとめようと思います。
概要
キャンベル生物学 原書11版は1444ページ、目測でA4サイズくらいの本で、
生物学の幅広い分野の基礎が学べる本です。
「高校生にとっても最適の教科書」とありますが、まさにその通りで、
解説が非常に丁寧でわかりやすかったです。(英訳だからか独特の言い回しがありますがそれは慣れます)
わざわざどうしてこの本を読んだのかといいますと、高校の生物の先生に勧められたからです。
最初は割と緩く読んでいたんですけど、このままだといつまでたっても読み終わらない気がしたので、
4月あたりからスパートをかけました。グラフにも必死さが現れていますね()
キャンベル生物学のよさ
全体的には「学校で習った分野」と「そうでない分野」に分かれていました。
前者は動物の形態と機能などで、復習になったほか、新たな概念などを取り入れて学びを深めることができました。
後者は生命史などで、少し負荷はありましたが、そこでも既習分野との関連性や相似性が見えてきて面白かったです。
次に、それぞれのテーマについて感想を書きたいと思います。
ミクロ・マクロの視点の推移が面白い
「空間としての推移」では、生体分子の構造という非常にミクロな視点から、
細胞小器官の構造、細胞の構造、組織、器官、個体、個体群、群集、生態系、と、マクロな視点に移っていく様子がよく理解出来ました。
「時間としての推移」では、遺伝的変異の頻度変化(小進化)がどう種分化(大進化)につながってくるのかとして、
「ミクロ」と「マクロ」のつながりが捉えられました。
少しそれますが、進化と生態系は相互作用するので、ここで「空間」と「時間」のつながりも生まれます。
生物学は空間にも時間にも広がりを持っているのが強く認識できました。
生命のフラクタル
そこで気づいたことがあります。
生命が「フラクタル」のようであるということです。
(部活の先輩が作ってくださいました、マンデルブロ集合)
フラクタルとは Wikipedia によると、「部分と全体が自己相似」になっているもののことだそうです。
これは生物を通しても言えると思います。
例えば、空間としてのフラクタルを見てみましょう。
ミクロな視点で原子に注目します。原子は光を吸収して熱を放出することが多いです。
これをマクロな視点で考えると、生態系全体としても、やはりこのようなことが起きています。
生産者である主に緑色植物が光を吸収します。そのエネルギーは生態系内では化学エネルギーとして循環しますが、
生態系の外に出される形はやはり熱が多いです。
時間として考えてみてもこのことが当てはまります。
少し広い例となりますが、細胞は分裂し、死にます。また個体は誕生・死亡します。
同じように種は分化・絶滅します。
これらは同じような表し方がされています。p1194の細胞系譜や、よくある家系図、また種の系統樹は似た形をしています。
固有の例ですがミツバチはその個体群自身が一つの個体のようにふるまいます。女王バチが生殖細胞に当てはまったりします。
無限に続くフラクタルというわけではないですが、部分が全体に対応付けできます。
あくまで見方の1つですが、どうしてこのような見方ができるのか思うと不思議です。
1つ思っているのは、「全体」は「部分」より後にできるので、「部分」が環境に適合していた形態が、そのまま「全体」にも引き継がれるのかなっていうことです。
これも環境適合的な選択圧を受けているのでしょう。
本書にはこの視点の推移で「組織化」や「創発特性」という概念が取り上げられています。
創発特性は抽象度が上がる(=よりマクロになる)ことで新たに特徴が生まれるということです。
例えばニューロン一本ではこうやってブログは書けませんが、組織化して脳となることでブログが書けるようになっています。
組織化により個々の特徴が再び現れること(=フラクタル)と、新たな特徴が現れること(=創発特性)の2つがあって、
それぞれ大切なのだろうと思います。
分野横断的な学習ができて面白い
読み進めるにあたって、生物学は様々な分野と連係しているのだと気づかされました。
例えば、統計などでは数学、化石記録などでは地学、バイオームでは地理、代謝には物理、環境保全では社会系、
シミュレーションなどでは情報、といった感じです。
生物学から見ると様々な分野とつながって、分野のカバー範囲の広さを感じさせられますが、
逆から見ると、様々な分野から生物学につながっています。
これは、私たちの生活の様々な場面に生物学が絡んでくるからなのでしょう。事実私たちは生物です。
個々で興味を持ったこと
色々あります。
最初の方では代謝がエネルギーの吸収・放出で表せる感じが楽しかったです。
化学エネルギーって(少なくともここでは)電子の位置エネルギーなんですね。
ATPがどうして高エネルギーを持っているのか、そのエネルギーをどうやって酵素等に付与するのかがわかって
もやもやが消えました。
ハーディ・ワインベルグ平衡や個体群生態学では数学とのつながりが個人的に好きでした。
最後にガイア理論です。(本文中ではガイア仮説)
これは結構気になっています。先ほどフラクタルの話をしましたが、なんと「地球全体」を1つの生命体と捉えて、
そこでも恒常性を維持する働きがあると考えるそうです。賛否両論あるそうですが。
これから調べてみたいと思います。
まとめ・これから読む人にアドバイス
ただ知識を広げさせてくれるのではなく、それをもとに色々考えさせてくれたりする本でした。
忍耐力と読解力も上がったでしょう。
これから読む人へ
多分本気で読めば1か月くらいで終わります。僕は半年かかっちゃったんですけど()
あと、個々の章の話をそこで完結させないで、他の分野とのつながり、を意識して読むと見えてくるものが変わります。
結構疲れますが得られるものは大きいので頑張ってください(小並)